暑いよ~っ!母乳飲みたいよ~!不安だよ~!

 赤ちゃんの泣き声にかき消されそうなママの声…。泣きやまない?いろいろ考えられるな~赤ちゃん…。「はい、今すぐ伺います!」

「え~っ!これから?この暑さの中~っ?がんばれ~っ!」講演会から戻って休む間もなくお仕事に走る。着いた先には、泣きじゃくる赤ちゃんと涙目の母親がいた。「赤ちゃんが泣きやまなくて…」

赤ちゃんもママも一般状態問題なし。だけど、赤ちゃんは汗と涙でぐっしょり。パパは一昨日から仕事で不在。頼る人もなくワンオペ。ママは汗だくでずっと抱っこであやし続けていた。

母乳の出が悪くなっていた。赤ちゃんのお腹はペッチャンコ。ママは赤ちゃんを抱きっぱなしで肩がバンバンに張っている。特に右の乳腺はしこりになっていた。これだけで赤ちゃんの泣きの原因。ママも泣きやまない状況に不安で不安で・・・。二つの不安が鏡のように重なり、二つ泣き顔になっている。まずはママだ。原因はオッパイ?①暑い②水分摂ってない③食事なんて無理④ヘトヘト⑤寝不足⑥訳がわかんない・・・これで乳腺炎が起きたり、分泌が悪くなったりは当然考えられる。そして赤ちゃん①空腹②眠い③汗ぐっしょり④ママがオロオロ⑤不安⑥訳がわかんない・・・同じだ。さて一つ一つ解決だ。

まずは、赤ちゃんの汗を拭きママの涙と汗をぬぐう。赤ちゃんの抱っこから少し解放されただけで母の表情がホッとに変わった。赤ちゃんは汗を拭き、着替えとおむつ交換。抱き上げ声をかける。大泣きが落ち着いていく。座ったまま片手で右の乳頭をほぐし、分泌を確認。しこりの先の乳腺から濃い乳汁が出始める。オーケー。さぁ、ママのおっぱい飲もうね。硬くなった右の乳房はぐんぐんほぐれていく。「50g飲んだよ」「えーーーっ」続いて左の乳房。こっちは楽に乳汁がはじける。コクコク飲んでいく赤ちゃん。「こっちは一瞬で100g」「お腹減っていたなら飲めばいいのに~」とママは赤ちゃんの顔をなでながら笑顔で語りかける。赤ちゃんは空腹が満たされ全身の力が抜けて寝付く。

一人でも大丈夫だけど、少しの不安はどんどん大きくなって収拾がつかなくなっただけでした。電話くれて良かった。ママを横にして右の乳房をケアする。出方の悪くなった乳腺から残乳が噴(吹)き出す。顔や身体に降りかかる母乳はママの不安だったみたいにどんどん出てくる。「ほら、心配がなくなるみたいにしこりもなくなったよ。フワフワのオッパイになったよ~。お疲れ様、一人でよく頑張ったね」ママに座ってもらってバンバンの肩を温めほぐす…。「あ~、気持ちいい~」汗だくで泣いていたのが噓のよう。きれいな笑顔だ・・・。

訪問にきて良かった。「明日でいい」なんて言ってたけど、すぐに走ってよかった。おやすみなさい。

これで、赤ちゃんもママもゆっくり休める。眠れる。明日にはパパが帰ってくる。笑顔で「頑張ったね」ってほめてくれる。ママとしての自信が少し膨らむ。その繰り返し。お手伝いが出来て良かった

泣き言を言っていいんです。ママだけじゃなくて赤ちゃんも泣いて伝えていいんです。無理しないで「助けてよ~」って言っていいんですよ。「遅くなってすみません」とか「疲れているところごめんなさい」なんて言わないでくださいな。好きな助産師の技術と気づきであなたのためになれたなら嬉しいのですから…

早い春
9月の桜